2010年6月13日、午後10時52分。
ある一機の探査機が、その長い任務を終えました。
彼の名は「はやぶさ」。
とある小惑星の探査という任務を帯び、今から7年前の2003年5月に打ち上げられた、日本発の小惑星探査機です。
彼は様々な新技術を搭載され、その技術試験として地球を飛び立ちました。
総重量500kg。あの気象衛星「ひまわり」が2.4トン、スペースシャトルは70トンですから、小さな小さな探査機です。
この小さな身体に課せられた任務は
- 電気推進(イオンエンジン)で飛行すること
- 自律的に飛行すること
- 小惑星「イトカワ」を精密に探査すること
- 小惑星へ着陸し、そして離陸すること
- 小惑星の岩石サンプルを採取すること
- サンプルの入ったカプセルを地球に持ち帰ること
この一つでも成し遂げることができれば前人未踏、世界初という、非常に困難な任務。
それを彼はこれまでに4つ、成し遂げてきました。
もちろん、それは楽な旅ではありません。
目的地は地球から3億キロの彼方にある、直径500mほどの小惑星。広大な宇宙から見たら、砂のかけらにもなりません。
その砂のかけらは、毎秒25キロ、時速9万キロ以上の速度で太陽を巡っており、「はやぶさ」はそれに着陸しなければならないのです。
彼は、やり遂げました。
いくつものトラブルを乗り越え、史上初、地球からは小さすぎて観測することができないほどの小惑星に到着し、着陸に成功しました。小惑星のサンプルの採取自体には失敗しましたが、わずかな砂煙がカプセルに入った可能性はあります。
そしてまたこれも史上初、離陸に成功。
しかし。
ここからさらなる試練が始まるのです。
離陸直後、燃料漏れが発生。
機体は制御不能となり、遂に2005年12月9日、通信が途絶。
ほとんどの人が諦めたでしょう。
でも、「はやぶさ」は諦めていなかったのです。
彼は「自立的」に動くことができる、史上初の探査機です。おそらく、少しずつ、少しずつ、姿勢を立て直したのでしょう。
40日が経過した2006年1月23日、「はやぶさ」からのビーコンが受信されました。
が、既に彼は満身創痍でした。搭載されているリチウムイオンバッテリは既に放電した状態で、しかも11セル中4セルが使用不能。さらに、化学エンジンの燃料はほぼ全て喪失した状態だった上に酸化剤も漏洩、残量ゼロ。
イオンエンジン用のキセノンガスが通信途絶時からほぼ変わらない状態を保っているのみでした。
JAXAのエンジニアと「はやぶさ」は、少しずつ復旧作業にとりかかりました。
そして、ビーコン受信から1年3ヶ月が経った2007年4月25日、遂に地球帰還を目指して本格始動したのです。その時点での地球との距離、約3億キロ。
復旧したとは言え、機体のあちこちは劣化し、満身創痍には変わりありません。
JAXAのエンジニアと「はやぶさ」は、使える機能をつぎはぎし、代替方法を見つけ出し、地球を目指しました。
そして、昨日、2010年6月13日。
遂に「はやぶさ」は地球に帰還しました。
19:54、小惑星サンプルが入っている可能性のある、大事な大事なカプセルを切り離し。あとを地球の重力に託しました。
そして、22:51。
「はやぶさ」は大気圏に再突入。
切り離したカプセルと共に、大気との摩擦熱で白熱し、ばらばらになり、消えました。
彼の7年間・60億キロに及ぶ、長い長い旅は、終わりました。
この様子は管制室の模様と同時にUstreamで中継され、僕もその瞬間を目撃することができました。
Ustreamの録画、NASAやJAXAの映像や画像も公開されています。
いくつかニュース記事へのリンクなども併せてご紹介しますので、ぜひ、ご覧ください。
- はやぶさ カプセルの落下確認 NHKニュース
最も素晴らしい映像かもしれません - 「はやぶ さ」大気圏突入、60億キロの旅帰還 : ニュース : 宇宙 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
写真が素晴らしい
HAYABUSA re-entry
Ustreamで中継されていた録画映像です。-
YouTube – Hayabusa re-entry
こちらはYouTubeから。
地球への再突入の直前、「はやぶさ」は最後の力を振り絞り、底面カメラの向きを変えました。
そして、最後の1枚となる画像を撮影、鹿児島の受信局にそのデータを送信しました。
その画像が、これです。
彼が最後に見たもの、それは母なる地球の姿でした。
漆黒の宇宙に浮かぶ地球、それを包む光。
最後の最後までデータを送り続け、そして通信が途絶えました。
彼は、地球の姿をなんとしてもデータストリームに入れたかったに違いありません。
「はやぶさ」、本当にお疲れ様。
そして、ありがとう。








